公認会計士という確固たるキャリアを持ちながら、クルマ系YouTuberとしても絶大な人気を誇る「あま猫」。その活動は単なる趣味の延長ではなく、明確なビジネス哲学と戦略に裏打ちされています。彼女の歩みは、会計士としての論理的思考と、YouTuberとしての泥臭い「継続」が融合した、極めて現代的なビジネスモデルを示しています。この哲学を理解することは、あらゆる分野で挑戦を続ける人々にとって、貴重なヒントとなるでしょう。
この記事の目次
YouTube活動開始の「意外な動機」と初期の戦略転換

あま猫さんがYouTubeを始めたきっかけは、多くの人が想像するような「有名になりたい」や「一攫千金を狙いたい」といった動機とは大きく異なっています。公認会計士の資格を取得し、監査法人に勤務を始めた2020年頃、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが中心となり、通勤時間などが削減されたことで生まれた「暇」がその原点でした。彼女の初期の目的は、愛車である SUBARU WRX STI TypeS の駐車場代を賄うための「お小遣い稼ぎ」という、極めて現実的かつささやかなものでした。
この初期段階において、彼女の会計士としての側面が、動画の方向性を決定づける重要な役割を果たします。最初に投稿した麻雀のゲーム実況動画は、再生回数が伸び悩みました。そこで彼女が次に行ったのは、チャンネルのテーマを自動車、具体的には自身の愛車の洗車動画に切り替えるという、大胆な戦略転換でした。この動画がそれまでの5倍以上の再生数を記録したことで、彼女はマーケットの規模を肌で感じ取ります。麻雀というニッチな市場よりも、自動車というより大きな層にリーチできる分野を選ぶことが、成長の絶対条件であると論理的に判断したのです。この迅速な「撤退と転換」の判断こそ、彼女のビジネスセンスの礎と言えます。
フェラーリ購入で退路を断つ「背水の陣」戦略
チャンネル登録者数が1000人に到達し、収益化の目処が立った後も、活動は順調に継続されましたが、彼女のビジネス戦略が次のステージに進んだのは、愛車に Ferrari Portofino を迎え入れた時でした。この高級スポーツカーの維持費は、彼女にとって「絶対に稼がなければならない」という強烈な経済的なプレッシャーとなりました。
この行動は、売れない芸人があえて高額な家賃の家に住み、強制的に自分を追い込む心理と共通しています。彼女は、フェラーリという高額な固定費を自らに課すことで、YouTube活動の頻度を週2~3回から「毎日投稿」へと一気に引き上げました。これは、退路を断ち、前進するしか選択肢がない状況を作り出す「背水の陣」の戦略です。この時点で、彼女は安定した会計士の給与よりも、不確実ながらも大きなリターンが見込めるYouTubeの収益を優先し、監査法人での勤務日数を減らす交渉を行い、結果的に副業としての活動に集中できる体制を構築しました。このリスクテイクと環境整備能力は、彼女のキャリア形成における決定的な哲学と言えます。
着実な成長を支える「継続の哲学」
あま猫さんのチャンネルは、特定の動画が爆発的に再生される「バズ」によって急成長したタイプではなく、地道な「継続」によって着実に階段を上ってきたタイプであると自身で語っています。彼女の成功の核心には、会計士試験の勉強で培われたという「継続できる力」が深く関わっています。彼女は、成功の秘訣について、麻雀漫画『勝負伝説 哲也』の言葉を引用し、「人は怠を求めて勤勉に行き着く」という哲学を掲げています。
これは、「働かずに悠々自適に過ごしたい」という理想の未来(怠)を実現するためには、現実として「今、必死に働く(勤勉)」しかないという、逆説的な思考です。楽な道は誰もが望むが、それを実現する確実な方法は、ただひたすら努力し、活動を継続することにあると彼女は主張します。特に、多くのYouTuberが再生数が落ち込む「波」の時期に活動を止めてしまう中で、彼女は動画投稿やライブ配信などの代替手段を用いてでも、活動を「継続する」ことこそが、最も確実で効率的な成功法則であると断言しています。
消費者目線で業界をクリーンにするという使命
現在のあま猫さんの活動目標は、単に収益や登録者数といった「数字」を追いかけることではなく、より高次の「使命」へと進化しています。彼女は、現行のYouTubeの登録者数が必ずしも実態を示すものではない(広告費で水増しが可能である)と認識しており、数字へのこだわりを捨てています。
彼女の現在の最大の目標は、「車好きを一人でも増やす」こと、そして「自動車業界をクリーンな場所にする」ことにあります。彼女自身が Ferrari 488 Spider に関するトラブルや、NISSAN GT-R のディーラー対応など、ユーザー側として不当な経験をしてきたことを踏まえ、今後、車を購入する若い世代や潜在的な愛好家たちが、同じようなトラブルに遭遇して欲しくないと考えています。
メーカー側や評論家といった「業界側の人間」ではない、最終的にお金を払う「消費者側(ユーザー側)」の意見を代弁する存在として、積極的に問題提起を行うことが、彼女の活動の意義となっています。これは、彼女が公認会計士として培った「公正な視点」と「問題を発見し、是正を求める」という能力が、YouTubeというプラットフォーム上で活かされている好例と言えるでしょう。彼女の哲学は、個人の成功を追求するだけでなく、自身の影響力を社会的な課題解決に役立てる「ソーシャルビジネス」の側面を強く持っています。
彼女のガレージにはこれまで、ホンダ NSX (NC1)やレクサス IS500 First Editionから、現在の主力である Lamborghini Huracán EVO Spyder や Lamborghini Urus 、Ferrari 812 Superfast といったスーパーカー、さらにはホンダ NSX (NA1)や NISSAN GT-R Premium edition T-specといった日本の名車までが並んできました。これらの多様な車種のオーナーとしての実体験が、彼女の消費者としての発言に説得力を持たせているのです。彼女のビジネス哲学は、論理的な目標設定、環境による自己強制、そして社会的な使命感という、多層的な要素によって成り立っています。
※この記事は以下の動画を基に再構築しました。
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